「高齢だから借りられない?」住まいの選択に立ちはだかる壁と、これからの備え
はじめに:静かに広がる「住まい難民」という現実
「年齢を理由に、賃貸の入居を断られた」
そんな声を、少しずつ耳にするようになりました。
高齢化が進む今、これは決して他人事ではありません。
空き家が増える一方で、高齢者が住まいを見つけられない――この矛盾した現実に、私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。
なぜ高齢者は賃貸を借りにくいのか
賃貸住宅のオーナーや管理会社の多くは、「高齢者の入居」に慎重な姿勢を取ります。その背景には、次のようなリスクへの懸念があります。
・孤独死の可能性
・病気や介護が必要になる未来
・収入の不安定さ(年金のみの生活)
オーナーにとっては、「入居後に何かあったとき、自分の責任になるのではないか」という心理的負担が大きく、それが“年齢制限”という形で表れているのが現状です。
たとえ健康であっても、「先のことがわからない」というだけで門前払いされてしまう。それが、今の高齢者の賃貸住宅事情です。
賃貸か、持ち家か――悩ましい住まいの選択
人生の後半に差し掛かると、「今の家を売って賃貸に移ろうか」という選択肢も見えてきます。
実際、子育てが終わり、ご夫婦だけ、あるいはお一人での生活になったタイミングで、“住み替え”を考える方は多くいらっしゃいます。
賃貸のメリット:
・修繕の手間がない
・環境に応じて柔軟に引越しができる
・所有による負担が少ない
賃貸のデメリット:
・入居審査で年齢や健康状態が問われる
・物件の選択肢が限られる
・高齢者歓迎の物件は家賃が高額なことがある
一方、「持ち家」は資産価値や自由度はありますが、月々の固定資産税、修繕費、管理費などのランニングコストが避けられません。
さらに、将来売却するにも「隣人関係が悪い」「住みづらいエリアだった」などで、身動きが取りにくくなる場合もあります。
高齢者のための新たな選択肢とは?
こうした課題に対応するため、最近は「高齢者向け賃貸住宅」の選択肢も増えてきました。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
→ 見守りや生活支援サービスがついた安心感。ただし、費用は高め。
居住支援住宅(サポート住宅)
→ 安否確認やセンサー設置を条件に、費用を抑えた賃貸として認定される住宅。今後増加に期待。
URの高齢者向け賃貸
→ 公的機関による安定性がありながらも、供給数が限られているため人気で入居できないことも。
また、「預貯金額や保証人情報を提示すれば入居可能な物件」も一部にあり、事前の情報収集がとても大切になります。
住み替えと人生設計を見直す時期
高齢期の住み替えには、「安心」と「自由さ」のバランスが欠かせません。
・老後資金との兼ね合い
・介護の可能性
・周囲の支援体制
・最後はホームに入居するのか、在宅を選ぶのか
住まいに求める条件も、年齢とともに変化します。「今の家を売却して資金を確保し、賃貸へ」という道も現実的な選択肢の一つです。
ですが今は、制度も市場もまだ“過渡期”。
この数年が、最も移行が難しい時期であるとも言われています。
まとめ:安心できる「住まい」のために、今できることを
高齢者を取り巻く住まいの課題は、これから社会全体で向き合うべきテーマです。
一方で、個人としても早めの備えと情報収集が、不安のない選択につながります。
・将来、どんな暮らし方をしたいのか?
・どこに住みたいのか?
・どんなサポートが必要になるのか?
ぜひ、今のうちに丁寧に考えてみてください。
住まいは、人生の質を大きく左右する「土台」です。今の選択が、未来の安心につながります。