相続トラブルはなぜ起きる?実家・不動産相続で揉める理由

はじめに

「うちは財産が少ないから、相続争いなんて無縁だ」
そう思っている方にこそ、知っておいてほしい現実があります。

実は、相続トラブルで家庭裁判所に持ち込まれるケースの約77%が、資産額5,000万円以下の「ごく一般的な家庭」です。なぜ「普通の家」ほど揉めるのか?その理由は、相続財産の中心が「実家(不動産)」だからです。

  • 分けにくい: 現金のように1円単位で等分できない
  • 価値が不明瞭: 売りたい人と住みたい人で、評価額の認識がズレる
  • 感情が絡む: 「思い出」があるため、合理的な判断ができなくなる

 

多くの方が、相続が起きてから「どうするか」を考え始めますが、その時にはすでに兄弟間で生活状況や価値観が異なり、話し合いが平行線をたどってしまいます。

 

令和6年司法統計年報によると、遺産分割トラブルの構成比は以下の通りです。

遺産の価額 トラブルの割合
1,000万円以下 約35%
5,000万円以下 約42%
合計(5,000万円以下) 約77%

 

「お金持ちの悩み」と思われがちな相続争いですが、実態は金額の大小ではありません。

そこで今回は、不動産の現場で起きているトラブル例とその原因、そして「今すぐできる実家の相続対策」を分かりやすく解説します。

 

 

トラブルランキング

では、ここからは実家の相続でよく起きるトラブルをランキング形式で確認していきます。

 

第5位 不動産の価格で揉める

見落とされがちなトラブル要因の一つが「不動産の価格」に対する認識のズレです。

相続の場面では「相続税評価額」という数字が使われますが、この金額はあくまで税金計算のための基準であり、実際に市場で売却できる価格とは大きく乖離していることが珍しくありません。

例えば、相続税評価額が4,800万円の物件であっても、実際に売却すると8,000万円で成約するというケースは現場では普通に起きており、この差を理解せずに「評価額ベース」で財産分割をしてしまうと、結果的にどちらかが明らかに不利な状況になります。

このように、数字上は公平に見えても実態としては不公平が生じるため、後からその事実に気づいた時点でトラブルに発展するケースが見られます。

そのため、不動産を含む相続では、税務上の評価額ではなく「実際にいくらで売れるのか」という視点で判断することが重要になります。

 

第4位 共有名義になる

実家を兄弟で共有名義にするケースがありますが、一見すると公平に見えるこの選択は、将来的に大きな問題を引き起こす可能性があります。

なぜなら、不動産を共有している場合、売却・賃貸・建替えといったあらゆる意思決定において、原則として共有者全員の同意が必要になるため、誰か一人でも反対すれば何も進めることができなくなるからです。

さらに厄介なのは時間の経過で、相続が繰り返されることで共有者が増えることです。最終的には関係者が複雑に入り組んだ状態となり、事実上動かすことができない「負動産」になってしまうケースも珍しくありません。

このようなリスクを避けるためには、最初の段階で共有を選ばず、売却して現金で分けるか、あるいは一人が買い取って単独名義にするという判断が重要になります。

 

第3位 親のお金の管理問題

親と同居していた子どもが通帳やキャッシュカードを管理している場合、相続時に「お金を使い込んでいたのではないか」という疑いが生じることがあります。

実際に使い込みがあったかどうかに関係なく、第三者から見て支出の記録が不透明である場合、その疑念を完全に払拭することは難しく、結果として兄弟間の信頼関係が崩れてしまうケースが多く見られます。

それを防ぐためには、「証拠を残す」という意識を持つことが重要です。日頃から支出の記録を残し、必要に応じて家族間で共有しておきましょう。

 

第2位 介護の不公平

「自分が親の面倒を見てきたのに、なぜ相続は平等なのか」という不満は、相続の現場で非常によく見られるものです。しかし、法律上は基本的に法定相続分に従って分割されるため、介護の貢献度が自動的に反映されるわけではありません。

そのため、感情としては納得できない状況が生まれやすく、これがトラブルの引き金になることがあります。

この問題については、事後的な調整が難しいため、親が元気なうちに遺言書を作成し、どのように分配するかを明確にしておくことが現実的な対策となります。

 

第1位 遺言書がない

ここまでの問題の多くに共通しているのが「遺言がない」という点です。これが相続トラブルの最大の原因と言っても過言ではありません。

遺言書が存在しない場合、分割の基準が曖昧なまま話し合いが行われるため、最終的にはそれぞれの主張や感情がぶつかり合い、解決が困難になります。

逆に言えば、遺言書があるだけで、ほとんどのトラブルは未然に防ぐことができるため、その重要性は非常に高いと言えます。

 

ここまで見てきた通り、相続トラブルの原因はお金の多寡や人間関係の良し悪しではなく、事前に何も決めていないという「準備不足」にあります。

実家をどうするのか、誰がどのように相続するのか。そしてその価値はいくらなのかといった基本的な情報を整理していない状態で相続を迎えると、ほぼ確実に問題が発生します。

 

 

おわりに

対策としてやるべきことは、まず「実家をどうするのか」という方向性を決めることです。その上で不動産の市場価値を把握し、最終的には遺言書として意思を明確にしておくことも重要です。これらを事前に行っておくだけで、将来的なトラブルの大部分は回避することができます。

 

最後に強調しておきたいのは、「財産が少ないから大丈夫」という考え方が最も危険であるという点です。

実際には、現金などの調整余地が少なく、実家という分けにくい資産しか残っていないケースほど、分配が難しくなり、結果として揉める可能性が高くなります。また、相続は必ず起こるものであり、発生してからでは対応できる範囲が限られます。

まずは「この家をどうするのか」という視点で現状を見直すことが、最も現実的で効果的な第一歩です。