高齢でも賃貸に住める時代へ。住宅セーフティネット法の改正で変わる“住まいの常識”

はじめに

60代からの住み替えは、
「持ち家か、賃貸か」で人生の快適さが大きく変わります。

「定年を迎えて、これからの暮らしをどうするべきか」
「この家にこのまま住み続けて大丈夫だろうか」

50代60代になると、多くの方が住まいについて現実的な不安を感じ始めます。

階段の上り下り、掃除や庭の手入れ、通院や買い物の距離、将来の介護……。
若い頃には考えもしなかったことが、少しずつ“負担”としてのしかかってきます。

 

これまで住み替えというと、

「高齢になると賃貸は借りられない」
「結局、持ち家に住み続けるしかない」

と言われてきました。

しかし実は、近年の法改正によって、高齢者の賃貸事情は大きく変わっています。

「今までこそ選択肢が狭かったけれど、これからは“天国”に変わる可能性がある」
そんな時代に入ったのです。

 

そこで今回は、

  • 法改正によって高齢者の賃貸事情はどのように変化したのか
  • 賃貸と持ち家のメリット・デメリット

について解説します。

 

高齢者が賃貸を断られてきた現実

これまで多くの60代・70代の方が、賃貸住宅を探す中で厳しい現実に直面してきました。以下は実際にあった例です。

  • 半年で100件以上断られた(60代男性)
  • 健康で働いていても「年齢」を理由にNGだった(60代男性)
  • 紹介されるのは家賃の高い物件ばかり→結局、月20万の賃貸になった(70代女性)

「お金がある・健康である」こととは関係なく、
“年齢だけ”で断られるケースが少なくなかったのが現実です。

 

なぜ高齢者は賃貸を断られてきたのか?

理由は大きく3つあります。

① 孤独死リスク

万が一、室内で亡くなった場合、

  • 特殊清掃費用がかかる
  • 事故物件としての資産価値が低下する
  • 相続放棄されると大家の自己負担になるという不安がある

などのリスクがあります。

 

② 認知症リスク

  • 火の不始末
  • 家賃滞納
  • 近隣トラブル

こうした心配から、貸し渋りが起きています。

 

③ 死亡後の契約処理の負担

相続人がすぐに見つからない場合、

  • 契約解除が進まない
  • 残置物の処分ができない

といった問題も、大家さんにとって大きな不安でした。

 

そこで、上記のような不安を解消すべく改正されたのが、『住宅セーフティネット法』です。
令和7年(2025年)10月1日に施行されました。

 

住宅セーフティネット法とは

近年、

  • 高齢者の単身世帯が増えている
  • 持ち家を持たない人が増えている

こうした背景から、「高齢者でも安心して賃貸住宅に住める環境づくり」が国としても強く進められています。

賃貸住宅には、公営住宅のような公的なものと、一般の民間賃貸住宅があります。

しかし現実には、
民間の賃貸住宅には空き家や空室がたくさんある一方で、高齢者はなかなか借りられないという矛盾した状況が続いてきました。

この問題を改善するために整備されたのが、『住宅セーフティネット法』です。

この法律により、高齢者や単身者、低所得の方などの「住宅に配慮が必要な人」が、民間の賃貸住宅にも入居しやすくなる仕組みが整えられてきました。

 

住宅セーフティネット法の改正で何が変わったのか?

 

① 残置物の処理がしやすくなった

相続人が不明な場合でも、一定の手続きで室内の残置物が処理できるようになりました。

 

② 死亡時の契約解除がスムーズに

大家さんが、相続人を探し続けなくても契約解除が可能になる仕組みが整いました。

 

③ 見守りサービスの制度化

安否確認センサーや見守り体制が正式に制度化され、「孤独死リスク」を仕組みでカバーできるようになりました。

 

④ 大家さんへの補助・優遇制度

高齢者に貸すことで、補助金や税制面の優遇が受けられる制度が設計されています。

 

つまり、高齢者に貸すことが「リスク」から「メリット」に変わり始めたのです。

 

「持ち家を売って賃貸へ」も現実的な選択に

この法改正によって、

大家 → リスク減で貸しやすくなった
高齢者の家族 → 見守り体制で安心

となりました。

 

そして、
50代・60代の方の「持ち家を売却して、賃貸へ住み替える」という選択肢が、現実的なものになりました。

 

ここで、賃貸と持ち家、それぞれのメリット・デメリットを整理してみましょう。

 

賃貸に住み替えるメリット

① 現金という最強の老後資金を確保できる

持ち家を売却すれば、まとまった現金が手元に残ります。
医療費・介護費・生活費・旅行・趣味など、お金の自由度が一気に広がります。

 

② 維持費の負担から解放される

  • 固定資産税
  • 外壁や屋根の修繕
  • 給湯器・水回りの交換

こうした突発的な出費や業者手配のストレスがなくなります。

 

③ 人生の自由度が上がる

体調や生活の変化に合わせて、

  • 都心へ
  • 実家の近くへ
  • 医療機関のそばへ

と、柔軟に住み替えることができます。

 

④ 見守り体制で安心

高齢者向け賃貸では、安否確認サービス付きの物件も増えています。

 

賃貸のデメリット

一方で、賃貸にもデメリットはあります。

  • 家賃を一生払い続ける不安
  • 老後資金が少しずつ減っていく精神的負担
  • 「終の棲家」としての心理的安心感が弱い

この点は、価値観によって大きく左右されます。

 

持ち家に住み続けるメリット

①家賃がかからない安心感

毎月の固定費がなくなるため、年金生活になっても住まいの不安が少なく、家計の見通しが立てやすくなります。

 

②最終的に資産として残せる

例えば、

  • 老人ホームなどの施設に入る際に売却してその資金に充てる
  • 子どもに引き継ぐ

など、「選択肢の残る財産」になります。

 

③心理的な「自分の城」がある安心

誰にも気兼ねせず、自分のペースで暮らせる場所があることは、年齢を重ねるほど大きな安心につながります。

 

持ち家のデメリット

  • 修繕費の高額負担
  • 自由に住み替えできない
  • 孤独死・空き家リスク

 

まとめ

結論:
正解は人それぞれ。
でも「選択肢が増えた」ことが最大の変化と言えます。

 

賃貸が向いている人

  • 現金を手元に残したい
  • 将来の自由度を優先したい
  • 維持費を払いたくない

 

持ち家が向いている人

  • 今の場所で最期まで住みたい
  • 家族に残したい
  • 精神的な安心感を重視したい

 

大切なのは、「どちらが正解か」ではなく、「自分に合った選択を知ること」です。

かつては「高齢になったら賃貸は無理」と言われた時代でした。
しかし今は、賃貸も十分に現実的な選択肢になっています。

 

60代の今こそ、「売る・貸す・住み替える」を冷静に考えましょう。

住み替えは、体力・判断力・選択肢がまだ十分にある60代が最適なタイミングです。
70代に入ってからでは、できる選択が一気に狭まります。

  • 今の家はいくらで売れるのか
  • 賃貸に住み替えた場合、老後資金はどれくらい残るのか
  • 子どもにどんな負担がかかるのか

これらを一度、数字で冷静に整理してみることが、後悔しない第一歩です。

 

ワイズワンホームでは、
「売却」や「住み替え」についてご相談いただけます。
無理に売却を勧めることはありません。
「知るだけ」「比較するだけ」でも構いません。

60代からの住まい選びは、
これからの20年・30年の暮らしを左右する、人生の大きな分岐点です。
今こそ、後悔のない選択を一緒に考えていきましょう。